認知症ではないと診断されている父、でも確実にあたし達とは違う世界に入り込んでしまっている父
まだあたくしが若かったころ、客室露天風呂がある宿は高級宿だった時代に年に一度両親を東北や伊豆、熱海へ招待していたの
当時としてはびっくりするくらい高くて(今はもっとびっくりな値段になってるわよね)
でも移動がちゃんと出来て美味しいものを美味しいと感じて、それを共有出来る内に行かないと!
と少し焦り気味ではあったけどかれこれ五年以上は続け、コロナで中断してしまって今に至っているの
今は行ってもあまり興味も示さずって感じだろうし、「美味しいね」を共有出来そうもないからやめてるの
当時の写真はスマホにあるけど、見なくとも一定程度は思い出せる
勿論、正確ではないかもしれないし所々脚色されてるかも知れない
でも思い出なんてそんなものよね?
頑張って頼んでみんなで飲んだシャンパン
この料理が美味しいとか、去年行ったところの方が美味しいとか言い合えた空気感
「時間と資金があっても成立しない刻」を作る事が当時のうちにできた事は本当に良かったと、今は思うの
あの頃からかしら、父もシャンパン党になったのは
写真を見せたところで父は今はもう思い出さないかもしれない
でもきっと記憶のどこか、モヤモヤしてるかもしれないけれど、なにかその中でも垣間見えてじんわり思い出してくれたら良いなって
ふと思うの
記憶では辿れないかも知らないし、うっすらとどこか違う脳の領域にひっかかるかひっかからないか……
間違いなく存在していた、アノ刻
少しくらい脚色があってもいいのよ
もう、写真で確認する以外は誰も正確になんて覚えていないんだから
そうなると、写真もあってもなくてもいわね
